青森県の病院で入院患者が相部屋の男に殺害される事件が発生。しかし病院側は通報せず、遺族には「肺炎」とする死亡診断書を交付した。県警はこの対応を隠蔽とみなし、犯人隠避容疑での立件に向け捜査を進めている。
事件の概要 病院内での殺人と通報しなかった病院
2023年3月12日深夜、青森県八戸市の「みちのく記念病院」に入院していた高橋生悦さん(当時73歳)が、同じ部屋に入院していた59歳の男に襲われた。男は歯ブラシの柄を使い、高橋さんの顔面を何度も突き刺した。高橋さんは別室で手当てを受けたものの、翌13日午前10時10分に死亡が確認された。
通常、病院内で患者が不審な死を遂げた場合、病院側は速やかに警察に通報する。しかし、今回の事件では病院が通報を怠り、家族に対しても「転んで容体が急変した」と説明。さらには、死亡診断書の死因を「肺炎」とし、事件の事実を隠蔽しようとした疑いが浮上している。病院の職員が不信に思い、13日夕方に内々で県警に通報したことで、事件は明るみに出た。
「肺炎」とされた死因 司法解剖で明らかになった真実
遺族が病院の説明に疑問を抱いたのは、高橋さんの遺体を引き取った際の状況だった。顔には包帯が巻かれ、血のような跡が見えたという。病院から詳細な説明はなく、渡された死亡診断書には「肺炎」と記載されていたが、家族は違和感を覚えた。
13日午後、県警が遺族と連絡を取り、遺体を司法解剖に回した結果、死因は「頭と顔の損傷」であり、明らかに他殺であることが判明。CTスキャンの結果、肺炎の痕跡は一切見つからず、殺害時の傷が脳にまで達していたことが確認された。この結果により、病院が虚偽の診断書を作成し、事件を隠蔽しようとした可能性が極めて高いと判断された。
病院の責任と県警の捜査 犯人隠避の疑いで立件へ
県警は2023年4月、刑法の「虚偽診断書作成」などの容疑で病院を捜索。さらにその後の捜査で、病院側が遺族に「転んだ」と虚偽の説明をしたことや、死亡診断書に「肺炎」と記載したことが「犯人隠避」に該当する可能性があると判断し、立件に向け捜査を進めている。
病院が通報しなかった背景には、事件の発覚による評判への影響を恐れた可能性がある。医療機関は患者の命を守る場であるはずだが、今回のケースではその役割を果たすどころか、犯罪を隠蔽しようとした疑いが持たれている。県警は今後、病院関係者の責任を追及するとともに、診断書作成に関与した医師の刑事責任についても精査するとしている。
- 青森県八戸市の「みちのく記念病院」で入院患者が相部屋の男に殺害される
- 病院は警察に通報せず、遺族には「転倒による急変」と虚偽の説明
- 死亡診断書には死因が「肺炎」と記載され、事件を隠蔽しようとした疑い
- 司法解剖により、死因は「頭と顔の損傷」であり、明らかに他殺と判明
- 県警は病院の対応が「犯人隠避」に該当するとみて立件に向け捜査を進めている
【補足情報】
- みちのく記念病院(青森県八戸市)
青森県八戸市にある医療機関で、精神科や依存症治療を含む医療を提供。事件発生後、運営体制や危機管理が問われている。 - 虚偽診断書作成罪(刑法160条)
医師が事実と異なる診断書を作成した場合に適用される罪で、刑事罰が科される可能性がある。 - 犯人隠避罪(刑法103条)
犯罪の発覚を防ぐ目的で事実を隠蔽した場合に適用される罪で、病院がこれに該当するかが捜査の焦点となっている。
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